【孤独の建築 Vol.14|Kloster Wiblingen(ヴィブリンゲン修道院)】

「過剰」と「美」は紙一重だ。
そう思いながら、俺はその部屋に立っていた。
ヴィブリンゲン修道院。
ドイツ南部、Neu-Ulmの郊外にある、かつてのベネディクト会修道院。
その図書館ホールは、まさに「ロココの極地」だった。
柱、天井、壁、どこを見ても装飾だらけ。
だが不思議と、その密度に圧倒されるというより、包まれている感覚があった。

金色の縁取り、雲の中に浮かぶ天井画、
彩色された柱と、それを受ける彫像たち。
建築というより、「空間が彫刻されている」とでも言いたくなるような空間。
図書館なのに、知的というより劇的。
本棚すら、空間構成の一部になっていた。
足音はよく響いた。
見上げれば、視線が迷子になるほどの天井画。
誰がこれを、図書の保存のために設計したのか。
でも同時に、こんな図書館があるという事実が、嬉しくもあった。
建築というよりも、舞台装置。
あるいは、神に向けた装飾の全力投球。
そう言いたくなるような空間だった。

一緒にいた後輩は、最初は笑っていた。
「これはちょっと、やりすぎですよね」って。
でもそのあと、しばらく黙って天井を見上げていた。
静かだった。
この空間の派手さに、静けさが負けていなかった。
むしろ、それを引き立てていた。
外に出ると、もう装飾の洪水はなかった。
でも、少しだけ世界が物足りなく感じた。
俺はいつも、無骨な構造や素材感に惹かれる。
でもこの日は、装飾に包まれるという体験も“建築”だと素直に思えた。
ヴィブリンゲン修道院。
ロココ様式の装飾美に出会って、
建築の「豊かさ」の幅を、少しだけ広げてもらえた気がした。

🔍 Kloster Wiblingen(ヴィブリンゲン修道院)アクセス・見学情報
- 所在地:Schlossstraße 38, 89079 Ulm-Wiblingen, Germany
- 創建:1093年(ベネディクト会修道院として創設)、18世紀に現在の姿へ
- 見どころ:図書館ホール(Bibliothekssaal)、教会(Klosterkirche)、博物館
🚉 公共交通でのアクセス
- 最寄駅:Ulm Hbf(ウルム中央駅)からバスで約15〜20分
- 「Wiblingen Kloster」停留所から徒歩すぐ
⏰ 開館時間・入場料(2025年時点)
- 開館:火〜日曜 10:00〜17:00(月曜休館)
- 入場料:€5(図書館+博物館入館)
💡 見学のポイント
- ロココ様式の極致とも言える図書館空間は、建築としても装飾芸術としても一見の価値あり
- 本棚・彫刻・天井画が構造や機能と完全に溶け合った設計
- 観光客も比較的少なく、ゆったりと建築と向き合える環境