【孤独の建築 Vol.8|Schloss Lichtenstein(リヒテンシュタイン城)】

晴れた空の下、断崖にぽつんと建つ城を見上げた。
リヒテンシュタイン城。
山深い場所にこんなものが建っているということ自体、どこか現実味がなかった。
崖の縁に、まるで引っかかるようにして建っている。
空に向かって尖った塔。細くて、背が高い。
石の色も重たくなく、どこか童話の挿絵のようだった。
でもその姿を眺めていると、ふと不思議な気持ちになる。
ここは本当に“城”だったのか。
当時、誰がここまで来て、何を思ってこの城を見上げたんだろう。
崖の上というロケーションは、確かに戦略的には強い。
攻めにくいし、遠くまで見渡せる。
それにしても、あまりに孤立している。

観光客がちらほらいたが、それでも静かだった。
自分の足音と、風の音だけが聞こえる。
その音すらも、崖の下に吸い込まれていくようだった。
橋を渡って敷地内に入ると、
崖の縁にせり出すように造られた城の輪郭が、よりはっきりと見えてきた。
地盤と切り離すように掘られた溝。
城を守るという意志が、造形そのものに表れている。
中に入るかどうか、少し迷った。
でも今日は、外から眺めるだけで十分だった。
この場所には、内部の豪華さより、
外部の“在り方”が似合っている気がした。


見晴らしは、驚くほどよかった。
崖の下には森が広がり、
遠くの丘の稜線まで、すっきりと見渡せる。
風が強く、木々がざわざわと音を立てている。
その音を背に、城がどっしりと立っていた。
何百年ものあいだ、こうして景色を見下ろしてきたのだろう。

この城が建てられた時代、
ここにどんな人がいたのか。
どんな生活があって、
誰がこの景色を見ていたのか。
その答えは分からないけれど、
いま自分がこうしてこの城を見上げていることもまた、
この建築の“歴史の一部”になるのかもしれないと思った。
リヒテンシュタイン城。
現実よりも少しだけ夢に近い城だった。
でも確かに、ここに建っていた。

🔍 Schloss Lichtenstein(リヒテンシュタイン城)アクセス・施設情報
- 所在地:72805 Lichtenstein, Baden-Württemberg, Germany
- 建築様式:ネオゴシック(19世紀ロマン主義建築)
- 別名:「ヴュルテンベルクの童話城」
- 築城年:現在の姿は1840年以降に再建(中世の要塞跡に建設)
🚉 公共交通でのアクセス
- 最寄駅:ReutlingenまたはLichtenstein Honau駅(ただしバスや徒歩の接続が必要)
- アルプスの麓にあり、車が最もアクセスしやすい(シュトゥットガルトから車で約1時間)
- 徒歩で向かう場合、最後は山道や坂があるため歩きやすい靴推奨
⏰ 開館時間・入場料(2025年時点)
- 開館:3月中旬〜10月末(冬期は閉館)
- 営業時間:9:00〜17:30(季節により変動)
- 入場料:大人 €10(ガイドツアー付き)
💡 見学のポイント
- 崖の上に建つロケーションが最大の見どころ
- 城の外観や見晴らしだけでも十分楽しめる
- ガイドツアーは英語・ドイツ語対応、内部見学も可能