イギリス

【建築と展示の交差点】大英博物館で感じた、構成としての空間と光

【孤独の建築 Vol.21|British Museum(大英博物館)】

曇り空のロンドン。
秋の冷たい空気のなか、地下鉄を降りてしばらく歩くと、
白く大きな列柱の建物が視界に入ってくる。
それが大英博物館だった。

正面から見ると、古典主義建築そのもの。
でも中に入った瞬間、印象はがらりと変わる。
広がっていたのは、巨大なグレート・コート
2000年に増築されたこの空間は、
古い中庭をガラス屋根で覆い、内部にもう一つの世界を作っている。

光はやわらかく拡散し、
音は天井に吸い込まれていく。
どこを歩いても、スケールが大きい。
なのに、不思議と落ち着いていられる空間だった。

展示を見に来たはずなのに、
気づけば**自分が「空間の中に展示されている」**ような感覚になる。

グレート・コートから各展示室へと向かう通路は、
時に回廊のようであり、時に洞窟のようでもあった。
空間の明るさや広がりは一様ではなく、
展示物のスケールに合わせて建築が変化していく。

それが自然だった。
あえて建築が主張しないことで、展示が生きる。
でも、よく見ると壁の厚み、天井の高さ、素材の切り替えなど、
建築が展示に対して丁寧に“居場所”を与えているのがわかる。

印象に残ったのは、グレート・コートの中心にある円形のリーディング・ルーム。
かつての知の中心が、今はそっと空間の中に佇んでいる。
その周囲を人が静かに巡り、歩き、展示に目を向ける。

展示を見ているようでいて、
実は空間そのものを感じている時間だった。

訪れる前は、“とにかくコレクションがすごい博物館”という印象だった。
でも実際には、建築が展示を支え、
そして展示が建築を“空間として意味づけている”。

大英博物館は、モノを集めて並べた場所ではなかった。
建築と展示と人が、同じリズムで動いている空間だった。

🔍 British Museum(大英博物館)

  • 所在地:Great Russell St, London WC1B 3DG, United Kingdom
  • 設立:1753年創設(グレート・コート増築:2000年)
  • 設計(グレート・コート):Foster + Partners(ノーマン・フォスター)

🚉 アクセス方法

  • 最寄駅:Tottenham Court Road(地下鉄)または Holborn 駅(徒歩約5分)
  • ロンドン中心部に位置し、周囲には多数のミュージアムやカフェも点在

⏰ 開館時間・入場料(2025年時点)

  • 毎日10:00〜17:00(金曜は20:30まで)
  • 入場無料(特別展は有料)

💡 見学のポイント

  • 中央のグレート・コートは、かつての中庭をガラス屋根で覆った象徴的空間
  • 展示室ごとに異なる天井高さ・照度・素材が設計されており、建築が展示の文脈に溶け込む構成
  • リーディング・ルーム(円形図書館)とその周囲の回遊性は建築的にも秀逸
  • 建築と展示の「対話」を感じながら歩けるミュージアム